搬送中に注意することの一つに褥瘡があります。褥瘡は「床ずれ」とも言われています。
褥瘡の原因として、『低栄養などの全身状態』『局所への圧迫』『皮膚の摩擦・ズレ』などがあり、各々の要因に対しての対策が必要です。搬送中には外的要因である『局所への圧迫』『皮膚の摩擦・ズレ』を取り除くことを心掛ける必要があると考えています。
『摩擦』とは身体を移動させる時に、皮膚の表面がマットなどにすれる現象です。摩擦を繰り返すことによって皮膚が損傷しやすくなります。摩擦で損傷を受けやすくなると、わずかな『圧迫』でも褥瘡が発生します。『ズレ』とは垂直方向の圧迫ではなく、接触面に沿った圧迫です。これは、リクライニング車いすの背もたれを倒した時に、体が足元方向にずり下がった時に見られます。ズレによって皮膚が引き伸ばされることで毛細血管が引き伸ばされ、虚血(局所へ血液が循環しない状態)となり褥瘡が発生しやすくなります。
リクライニング車いすで、身体が足元方向にずり下がることを予防するためには、前回ご紹介した、リクライニング時に座面の角度が変わるティルト機能が有効です。ズレを予防し、かつ体圧を分散することができます。また、リクライニングの角度を30度以上にすると体のずれ落ちが起こりやすくなるので、この点も注意が必要です。
また、同一体位を長時間続けることは圧迫を受けている部位に虚血が起こり、褥瘡が発生しやすくなります。ストレッチャーは病院のベッドとは違い寝返り等はほとんどできません。長時間の同一体位を避けるため、適宜、身体の向きを変えるなど、東播介護タクシーでは褥瘡の予防を心がけています。